期待を超える面白さ、店頭に並ぶ喜び──総社カイタックファクトリーで体現する、カッコいい“ものづくり”
written by ダシマス編集部
株式会社カイタックホールディングス
岡山県に本社を構える総合アパレル企業、カイタックグループ。その生産の中核を担う総社カイタックファクトリー(以下、カイタック)は、デニムの裁断から縫製、加工・検査仕上げまでを一貫して手掛ける、国内の同規模企業としては唯一と言われるジーンズ製造の一貫生産体制を持つ工場です。
同工場で加工課のサンプル担当として活躍する藤原達郎(ふじわら たつろう)さんは、「ジーンズが好き」という思いを胸に入社。デザイナーの描くイメージを、工場の職人たちと共に形あるものへと変えていく仕事に日々向き合っています。
レーザー、軽石、塩素──普段は見えないジーンズづくりのプロセスや裏側、生産現場のリアルを語っていただきました。
生産課 加工係 藤原達郎(ふじわら たつろう)さん
岡山県出身。県外の大学を卒業後、2017年にカイタックグループに入社し、総社工場へ配属。生産管理として約6年間勤務した後、2年前に加工課へ異動。現在はデザイナーの要望を形にするサンプル制作を担当し、工場と営業・デザイナーをつなぐ役割を担う。プライベートでは家族との時間を大切にしながら、休日には自らもジーンズを履いて過ごす。
レーザー、軽石、塩素──デザイナーの「作りたい」を形にする、試行錯誤の日々

──藤原さんは現在、どのような業務を担当されているのでしょうか。
加工課でサンプル制作を担当しています。主にデザイナーが「作りたい」と思っているものを具現化していく仕事ですね。デザイナーから届くイメージや要望をできるだけ多く引き出して、それを生産チームで形にしていきます。
加工の工程にはそれぞれのプロフェッショナルがいるので、その人たちと一緒に「どう作っていこうか」と試行錯誤を重ねながら進めています。
──具体的には、どのような工程を経てジーンズの加工感は生まれるのでしょうか。
加工には、大きく分けて「ドライプロセス」と「ウェットプロセス」の二つがあります。
まずドライプロセスでは、ジーンズを履き込んだときに出る「ヒゲ」と呼ばれるシワの跡を再現します。手作業でスリを入れていく方法と、レーザー加工機でデザインを照射して加工感を出す方法があって、これを組み合わせながら進めます。
その後のウェットプロセスでは、大きな洗濯機のような釜を使います。薬品や軽石を入れて回すことで、より古着っぽい風合いを出していくんです。さらに、手作業で生地を擦ったり、塩素を使って白さを出したりする工程もあります。

──かなり専門的な技術が必要そうですね。
そうですね。実は、こうしたレーザー加工などの技術は、デザインのためだけでなく、水や薬品の使用量を減らす「サステナブルな加工」としても重要な役割を果たしているんです。
例えば、カイタックグループの自社ブランド『YANUK(ヤヌーク)』も、環境への配慮とヴィンテージのような風合いを両立している点が高く評価されていますが、それを支えているのがこの工場の技術力です。
僕たちはただ服を作っているだけでなく、最先端の技術でブランドの価値や環境への取り組みも支えている。そう思うと、より仕事に熱が入りますね。

──サンプルを作る上で、特に意識していることはありますか。
量産できるかどうか、という視点は常に持つようにしています。やっぱりサンプルの段階でかっこいいものができても、それが100本、200本と安定して作れなければ製品にはならないので。その辺りは独断で進めず、上司にも逐一相談しながら判断するようにしています。
ただ、それだけではなく、せっかくならちょっと攻めたいなって気持ちもあって。もっとかっこいいものができる可能性があるなら、そこは挑戦したいなと。
だから時にはデザイナーに「こっちの方がいいんじゃないですか」と、言われた通りのものと自分が推すものと2パターン作って提案することもあります。それが採用されて、デザイナーの想像を超えるものができた時は、やっぱり一番嬉しいんですよね。
最初は漠然とした気持ちだった。期待に応える職人へと成長した今
──藤原さんがカイタックに入社されたきっかけを教えてください。
大学時代は県外に出ていたのですが、出身が岡山ということもあって就職先は地元で探していました。もともとファッションや服が好き──特にジーンズが好きだったので、繊維関係の仕事に就きたいなと。岡山はデニムや繊維産業が盛んな地域でもあったので、そこは自分にとって追い風でしたね。
同業他社も何社か受けたのですが、カイタックはパジャマやジーンズといったファッションアイテムから雑貨、寝具まで幅広く手掛けていて、一つの事業に依存していません。そうした安定した基盤があるのは、長く働く上で大きいなと感じました。

──最終的な入社の決め手は何だったのでしょうか。
決心したのは面接の時ですね。
就職活動中は営業でも生産管理でも、とにかくこの業界で働ければいいなという感覚で動いていました。そんな中、最終面接のときに「デニムが好きなんです」という話をしていたら、「自社工場があるけど、製造に興味ある?」と聞かれたので「あります」と答えたんです。
正直、当時は工場の仕事を具体的にイメージできていたわけではなかったのですが、好きなジーンズの生産現場に一番近いところで働けるって考えたら、すごく面白そうだなと。漠然とですけど、そういう感覚でしたね。
──実際に働いてみて、入社前とのギャップを感じるようなことはありましたか。
地味な作業も多いですし、大変なことも当然ありました。ただ、生産現場ってそういうものだろうなという覚悟は入社前から何となく持っていたので、「思っていたのと全然違う」ということはなかったですね。
大変だなと思うこともありながら、それも込みで楽しくやってこられたかなと思っています。
──これまでの仕事で印象に残っている出来事はありますか。
他の工場で作っていたジーンズの加工感や風合いを、カイタックでもできないかとデザイナーから相談を受けた仕事ですね。
面白そうだなと思いましたし、やってやろうという気持ちで取り組み始めました。ただ、同じようなことをしているつもりでも、工場が違うと水質や薬品の種類が違うので、全く同じものにはなかなかなりません。テスト用のサンプルを何十本も作って、加工のレシピを細かく微調整しながら何パターンも試す。納期も迫っていて「ここで決めないと量産が間に合わない」というプレッシャーを感じながら、試行錯誤を重ねました。
最終的には「これならいける」と自分でも納得できるところまで仕上げられました。相談を持ちかけたデザイナーが出来上がったものを見て、満足した様子で「ありがとうございます」と言ってもらえた時は本当に嬉しかったですね。ものすごく大変でしたが(笑)。
こうして苦労して作った製品が実際に店頭に並んでいるのを見かけると、自分の仕事にやりがいを感じますね。家族と買い物に行ったときなんかは、「すごいものを作ったんだぞ」って、内心ドヤ顔しています。

助け合いと品質へのこだわり。働いて感じた生産チームの空気感
──カイタックの工場としての強みは、どのようなところにあるのでしょうか。
工場には約130人が働いていて、デニムの一貫生産ができる体制が整っています。生地が入ってきたら、裁断、縫製、加工、検査、仕上げまで、すべて同じ建屋の中で完結する。店頭に並ぶのと同じ状態まで仕上げられる工場は、日本でもここだけじゃないかなと思います。
全部の工程がすぐ近くにあるので、何かあったらすぐに現場に行って確認できます。各工程のプロフェッショナルと直接話しながら仕事を進められるのも良いですね。デニムづくりを本当の意味で理解するには、この環境が最高だと感じています。

──働いている方々は、どのような雰囲気なのでしょうか。
女性が8割から9割でいろんな方がいますが、総じて真面目で自分の仕事に責任感を持っている方が多い印象ですね。子育て中の方も多いですが、お子さんの行事や急な体調不良でも休みが取りやすい環境になっています。
一人ひとりが複数の工程をこなせるので、誰かが休んでも周りがカバーできる。みんなで助け合いながら、きちんと製品も仕上げていける職場だと思います。
あと、品質に対するこだわりがとにかく強いのも、カイタックの特徴ですね。「そこまでチェックするの?」と思うくらい、細かく確認します。
例えば、縫製の人は仕様書の寸法が1ミリでも違っていないかを徹底的に見ますし、加工の現場でも、パンツの右足と左足で色の落ち方が微妙に違って見えないか、左右のバランスがおかしくないかまで目を光らせています。入社したばかりの頃はその細かさに正直驚きました。当時の自分は「それくらい、いいんじゃないかな」と思うこともあったのですが、それが当たり前のこととして現場に根付いているんですよね。入社して何年も経ちますけど、この姿勢は昔から変わっていません。本当に皆さんカッコいいし、尊敬します。
夢はファクトリーブランド。「こんなものを作ってみたい」の発想が叶う職場を目指して

──今後、挑戦していきたいことはありますか。
将来的には、工場発信のものづくりを実現したいという夢があります。今はブランドやメーカーからの依頼を受けて作る仕事がメインですが、もっと自分たちから「こういう加工はどうですか」と提案していきたいんです。
カイタックには、グループで『YANUK』を育ててきた実績があります。小規模なところからコツコツ始めて、今では雑誌やテレビでも取り上げられるようになりました。こうした成功事例があるので、良いものを作って発信していく土壌はあると感じています。だからこそ、ゆくゆくは工場発のファクトリーブランドも立ち上げられたら面白いですね。
イメージとしては農家さんの「産地直送」に近いです。作り手の顔が見える野菜って、やっぱり魅力的じゃないですか。それと同じように、デニムの生産現場から「いいものですよ」と自信を持って届けていく。作り手がもっと輝ける場所を作っていきたいと思っています。
──最後に、これから一緒に働きたい方へメッセージをお願いします。
ここ数年、若い男性社員が続けて入ってきてくれて、現場の雰囲気もさらに活気づいています。デニムが好き、服が好きという気持ちがあるなら、「こんなものを作ってみたい」という発想をどんどんぶつけてほしいですね。ここには、その想いを形にできる設備と技術、そして受け止めてくれる仲間がいます。
泥臭く試行錯誤した先に、最高にドヤ顔できる瞬間が待っています。熱い想いを持った方と一緒に、工場の未来を作っていけたら嬉しいですね。
(取材・執筆:大久保 崇)
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