自然豊かな長沼地域で営む「内陸の海」ちから寿し。厳選した食材と来店客の喜びへの強いこだわり
written by ダシマス編集部

有限会社ちから寿し

福島県須賀川市長沼地域で営業する老舗寿司店、ちから寿し。創業57年の歴史を持ちながらも、時代の変化に合わせて新たな挑戦を続けています。
過疎化が進む地域で、地元住民に愛され続けるお店の秘訣とはなんでしょうか。今回は、2代目店主の娘である佐久間 美稀(さくま みき)さんに、お店の歴史や特徴、そして時代に対応した新たな挑戦の日々についてお話を伺いました。地元の歴史ある寿司店が、どのようにして伝統を守りながら進化を重ね、地域と共に歩んでいるのか、その姿に迫ります。

フローズンちから工場責任者 佐久間 美稀(さくま みき)さん
寿司屋の長女として誕生するものの、最初に就いた職業は美容師。美容師免許を取得、ネイルもまつ毛エクステも勉強し、美容師を9年務めた。2019年に家業を継ぐことを決意し長沼へ舞い戻る。猛勉強し、調理師免許も取って家業にやる気奮闘中。笑顔と、感動も感じられる接客、お店、また、美容師経験も活かし「綺麗」な店舗づくりにも力を入れる。
「ちから寿しは内陸の海だ」長沼住民のために誕生し57年。内陸地域ならではのこだわり
――はじめに、ちから寿しとはどんなお店なのでしょうか?
創業は昭和44年、令和元年に50周年を迎えた寿司屋です。私の祖父が初代店主として開業しまして、現在は父である現店主と私を含む従業員5名で営業しています。
創業のきっかけは、長沼という地域に対する祖父の強い思いがあったそうです。長沼は電車も開通しておらず、人口は5,000人に満たないといわれています(2024年時点)。2021年には過疎地域としても認定され、地域住民の多くは高齢者ののどかな地域です。
創業当時は今以上に飲食店も少なかったそうで、車など移動手段のないお年寄りの方に、気軽に何か美味しいものを食べてほしいという思いから、商品配達まで対応できる寿司店としてちから寿しが生まれたと聞いています。地域の皆様に愛されながら、今では長沼のお客様以外にも、郡山や白河など他地域のお客様にも足を運んでいただけるようになりました。
――地域への思いから生まれ、愛されてきたお店なのですね。提供するお料理については、どのようなこだわりがあるのでしょうか。
使用するネタはもちろん、お米やお水など、あらゆる食材にこだわりを持っています。お米は近隣の天栄村にある、数々のコンクールでも金賞を受賞されている創業約190年の老舗農家さんから仕入れています。長沼は水がきれいなことでも知られていて、地元の美味しいお水を使い、お米をふっくらと炊き上げ血液をサラサラにする性質を持つ「エレン水」に整水してからお客様に提供しているんです。
父はよく「ちから寿しは内陸の海だ」と話しています。長沼は、海に面していない内陸の地域です。地元に海産物の名産品があるわけではないのですが、むしろそれは強みだと感じていて。郡山市場と豊洲市場を中心に、北海道から沖縄まで、特定の海に面していないからこそ、さまざまな地域から良質な旬の食材を厳選して仕入れ提供できる。海に面していないからこその身軽さが、ちから寿しの味を実現しているのだと考えています。
――食材に妥協しない、こだわりの強さが伝わってきました!そんなちから寿しの、看板メニューを教えてください。
一番ご注文を多くいただくのは、「海鮮丼ランチ」ですね。サーモン、ほたて、えびなど、10種類の海鮮を盛り付けた海鮮丼で、さらにランチ限定で本マグロのお寿司が1貫サービスでついてくるんです。味はもちろんのこと、お得さでも大変好評いただいている商品で、初めてご来店のお客様には必ずおすすめさせていただいています。
また、コロナ禍以降はご自宅でも新鮮なお寿司を味わっていただけるようにと、冷凍ちらし寿司のネット販売も始めました。長沼を離れ他地域で暮らす方が地元の味を気軽に楽しんでいただけるのはもちろん、お中元やお歳暮、イベント時の贈答用にも多数ご注文をいただいています。自然解凍で気軽にちから寿しの味を楽しんでいただけるので、遠方の方もぜひご賞味いただきたいです。
家族のようなあたたかな職場。来店客の喜びを追求するやりがいの日々
――佐久間さんご自身は、これまでどのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。
家業を手伝う前は10年くらい美容師として働いていて、6年ほど前に地元に戻り、家業を手伝うようになりました。主に接客やお店の内装整備を行いながら、お店の公式Instagramの運用も担当。2022年からは冷凍商品の工場管理者としても従事しています。
――働くお店の雰囲気を教えてください。
従業員5名に加え、アルバイトさんが数名勤務してくださっていますが、小さな職場だからこその家族のようなあたたかさに居心地の良さを感じます。店内の装飾やおすすめ商品のPOP作成など、どうしたらお店をよりよくしていけるのか、年齢関係なく率直に意見を交換しあえる空間ですし、何より働いていて楽しいです。
――ちから寿しで働き始めて、どんなことにやりがいを感じていますか。
お客様に喜んでいただけるのが何よりのやりがいですね。美容師時代に上司から言われた「綺麗なヘアスタイルで満足いただくのは大前提。それに加えて自分の身なりや、ていねいな接客なども心がけて、お客様には一石二鳥以上の価値を感じていただくようにしなさい」という言葉が今でも心に残っていて、寿司屋に転じた今もこの教えを大切にしています。
美味しい料理で、お腹を満たしていただくのは大前提。それ以外にも、店内のインテリアをこまめに見直したり、おすすめ商品を定期的にリニューアルして情報更新したり。メニューにない新鮮な食材を突発的に仕入れることもあるので、そうした情報はPOPにわかりやすく記載するなど、工夫しています。
少人数のお店だからこそ、一人ひとりの特技を活かしてお客様のために貢献できる、今の働き方がすごく好きなんです。ご来店いただくたびに、「以前とはまた違う発見がある」と新鮮な喜びを感じていただけるように、味以外の面でも日々努力を重ねています。
地元に根ざし、目指す販路拡大。新たな仲間とお店をより大きくしていきたい
――今後、ちから寿しをどのようなお店にしていきたいですか。
地元のお客様にとっても、ここは第2の家のような場所だと思っていただけているのではないかと思います。昔からずっと地域の皆様に愛され続けてきたお店なので、これからも末永く営んでいけたら嬉しいです。
そのうえで、時代の変化にもうまく対応し、販路を拡大していきたい。現在は、自社のネット販売ページも構築中なんです(2025年7月取材当時)。冷凍商品の販売にもさらに力を入れて、幅広い地域や年齢のお客様にちから寿しの味を楽しんでいただけるようにしていきたいと思います。
――最後に、この記事を読んだ方へのメッセージをお願いいたします!
ちから寿しは、従業員もお客様も家族のように優しい方ばかりです。お客様の中には野菜や夕食のおかずをおすそ分けしてくださる方もいて、田舎特有のあたたかさに包まれて働くことができます。
この先も末永く、地域とともに時を刻んでいけたらと思っています。お若い方や、今後のちから寿しの味を担っていきたい職人希望の方も大歓迎!料理が好きで、私たちと一緒にお店をもっと大きくしていきたい方には、ぜひとも仲間になってちから寿しを支えていただけたら嬉しいです!
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公式Instagram:https://www.instagram.com/chikarasushi32