【ダシマス老舗・郡山自動車学校】常に先頭に立ち、自動車学校の見本であり続ける。それが自社の誇り

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written by ダシマス編集部

創業30年以上の老舗企業に焦点を当てる本企画。持続的な成長と成功をおさめ、時代をまたぎ社会に貢献してきた歴史を紐解き、その長い期間によって培われた文化や知見から、多くの人に気づきとインスピレーションを与えることを目指しています。

本記事では、2024年に創業70年を迎え、福島県内でも一番古い歴史を持つ、郡山自動車学校代表取締役、小川則雄(おがわ のりお)さんにご登場いただきます。

戦後まもなくして始めた自動車学校。時代の流れと未来を見据えて、新しいことへの先行投資をし続ける小川さん。そこには“歴史ある自動車学校である”という誇りがありました。

地元・郡山のためになにができるのかを考え、未来に向けてより安全な車社会を作ることが自分の使命だと突き進みます。一歩先を見据えて、チャレンジし続ける小川さんにこれまでのことやこれから伝えたいことなど、その想いを語っていただきました。

郡山自動車学校代表取締役 小川 則雄さん(おがわ のりお)さん

郡山自動車学校代表取締役 小川 則雄さん(おがわ のりお)さん

郡山自動車学校代表取締役社長。郡山中央工業団地会会長。高校時代からサッカーを続けたり現在もスキーを楽しんだりと、アクティブな一面を持つ。

執筆:久保田まゆ香

執筆:久保田まゆ香

フリーライター。言葉を紡ぎ、誰かの後押しをしたいと取材・インタビュー・イベントレポート・書籍などを中心に執筆活動中。起業家のサポート業務なども担当。やんちゃ盛りな男子2人の母。いつかは推しと一緒に仕事をすることを目標に日々、夢に向かって歩み続けている。

県内最古の自動車学校だからこそ、常に先頭を走り続け見本であり続ける

 

――まずは郡山自動車の創業の経緯を教えてください。

昭和29年に山根町で私の父が自動車練習場という形で始めたのがきっかけです。戦争のときに父は軍隊に所属していました。3000人いる部隊のなかで免許証を持っているのが父ともう一人の方と2人しかいなくて、トラックの運転などを部隊の皆に教える役目でした。

終戦し父が帰ってきたとき、「これからは車の免許が普及する」と言い始めます。山根町に広大な土地があったこともあり、自動車練習場を始めるにはいいタイミングだとスタートしました。福島県内でも1番古い自動車学校であり、2024年5月16日で創業70年になります。

 

――業務内容や貴社の特徴などを教えてください。

一般的な運転免許の教習と産業機械講習を行っています。

産業機械講習所は平成15年から始まり、フォークリフト、シャベルローダー、不整地運搬車などの資格が取得ができる講習所です。あと、例えば木を伐採するチェーンソー。自分の庭を草刈りするのには資格はいりませんが、 公共事業で道路の草刈りや、公園の草刈りなどは 資格者証がないと入札に関われないんです。そういった講習も行っています。

自動車学校での免許取得者と高齢者講習者を合わせて約3000人、産業機械講習所の受講生で約8000人で、毎年1万人超す方々に支えられている状況ですね。

 

――産業機械講習を始めたのは、郡山の地域柄、そういった免許を求める人が多かったからでしょうか。

郡山という地域はかなり雪が降り、とても手がかかる除雪作業が必要です。広範囲に渡りたくさんの雪が降り積もるので、重機での作業が必須なんですね。ですから資格を取得する人は多いです。

 

 

――小川社長自身が大切にしている価値観、仕事する上で大事にされている考え方を教えてください。

県内で1番最初に始めた最も古い自動車学校という誇りがあります。最初に始めた自動車学校というところで、先頭に立って引っ張っていかないといけないという想いが強いですね。そんな想いもあって、とにかく新しいことがあれば、他の自動車学校よりも早く取り入れようと考えています。

 県内最古の自動車学校だからこそ、みんなのお手本でありたいと思っていまして。そんな気持ちがあったからこそ、率先して新しいものを取り入れ、チャレンジし続けるという土台が弊社にできたと思います。

例えば、身障者用の教習所というのも東北・北海道では弊社が初めてです。これはNHKの朝の番組で紹介されるくらい珍しかったみたいですね。あとは視聴覚教習なども1番最初に始めています。この教習所からスタートしたことはたくさんありますよ。

あと世界に目を向けると日本よりも進んでいることが多く、電気自動車や水素自動車など積極的に入り始めてますよね。そういった動きを見ていくと、いつかは私たちも取り組むことになると感じるので、それならばと、少しでも早い時期に取り組もうとしています。

他にも、東日本大震災のときに、電力の大切さを痛感したことがきっかけで始めた太陽光発電や、今後、車が空を飛ぶようになるかもしれないとか考えて、照明の電線も全部地中化もしました。いずれはやらねばならないと感じたら、できるときにやる。そんな気持ちで、他の自動車学校よりも先に始めていこうというのが私の基本です。

 

ここで働きたいという声が多数。魅力的な職場にするために取り組んできたこと

 

――新しいことを取り入れるのは事業だけでなく、従業員の働き方にも繋げていると聞いています。

平成15年に、男女機会均等法への対応ができているということで、秋田の会社と福島県から弊社、東北から2社が労働局長の表彰を受けました。女性でも男性でも関係なく資格によって給料も決めており、男女差という面で差はありません。

 

――職場の雰囲気や労働環境について、もう少し詳しく教えてください。

給料面も業界水準で見ると高い方であること、加えて、休みが取りやすい職場になるように気をつけています。

また、弊社では資格取得に応じて手当を加えています。自動車学校の指導員になるには、普通車と二輪車、中型に大型など十種類以上もの資格が必要です。各種目の資格を取得するごとに手当を加えていくことで、給料が上がっていくように改善しました。実際に女性指導員でも、大型特殊のブルドーザの免許を取得して教えていますし、検定員の資格も取得しています。こうした制度は、職員たちのモチベーションアップに繋がっていると考えます。

弊社は比較的退職者が少ない職場です。一昨年、昨年も定年退職者がいましたが、70歳まで延長して働きたいと希望を出してくれました。こうした働く環境という面でも、県内の自動車学校のお手本になりたいと考えているので力を入れて取り組んでいます。

実際、今は女性指導員が6人いるのですが、資格取得をして様々なチャレンジをしていますよ。職員が自主的に色々挑戦してくれるので、私自身もボケっとしていられないなと勇気をもらっています。非常にありがたい相互関係が築けていると感じています。

 

――取り組みが功を奏して実際に人が定着しているのが素晴らしいですね。

ありがたいことに、次から次へと「ここで働きたい」という声をいただきます。正直に話すと、職員募集に苦労したことはあまりないくらいです。給料の改革や、職員が働きやすくなるように、休みのシステムを変えたのは大きかったのでしょうね。

年末年始、弊社は12月29日から1週間休業にしています。生徒様のことを考えると、自動車学校で1週間休みをとることはあまりないのですが、職員の働きやすさを優先しました。こうした軸を持って判断していることが、人が定着する一番の理由ではないかと思います。

求人を出すよりも従業員を通じて働きたいと聞くことが多くて。面接では、働きやすい制度であることを強調したりと環境の良さをより伝えたりしているので、実際に働いている人から口コミを聞けて、中身をみてもらえていることからより人が集まってくれているのかなと思います。

 

「モノ」ではない「言葉」を売っている職業だという自覚

 

――事業も労働環境も、時代の変化にあわせてさまざまな取り組みをされているように感じます。

うちの自動車学校は、「モノ」を売ってるわけでないんです。私が思うのは、それぞれの指導員から出てくる「言葉」を売っているんです。時代が変化するからといって、「言葉」を使うことにはかわりません。いかに言葉で、安全運転という安全を理解してもらうかということが軸だと思うんです。

そういった思いがあるから、毎月1回、全体研修ということをやっています。それぞれのグループで、どうやったら「安全」を伝えやすいかなという研修です。そこをやり続けたことで、「言葉」をやっぱり大事にするようになりました。

そんな「言葉」を勉強するために、東京の落語協会から春風亭正朝師匠に来ていただいて、会話の間の取り方や強弱のつけ方を指導してもらっているんですよ。落語家さんは言葉を仕事にするだけあって、相手に届ける技術も素晴らしい。言葉を仕事にしている方から学ぶことは非常に勉強になります。

私たちの仕事も落語家さんと一緒です。自動車学校には、若い人から70歳以上の人まで幅広い年齢層の方がこられるため、それぞれの年代にあった話し方や間のとり方が求められます。

 

安全運転をしようとする人を増やし事故ゼロを目指す。それがこの仕事の役割

――この仕事の面白さややりがいを教えてください。

人に何かを教える、というのはやってみると楽しいものです。公安委員会のホームページで卒業生の1年間の事故・違反率が数値で見られるのですが、弊社を卒業した人たちが安全運転してくれているのが見えると特に思います。

また、こうした結果は職員が一生懸命取り組んでくれている証拠です。県内の自動車学校の見本になろうと取り組んでいることが、目に見えて感じとれるので私としても大変うれしく思います。

 

――貴社の今後の展望についてお聞かせください。

少子高齢化の流れもあり、自動車学校も厳しい状況になっています。全国でも1番多い時には3000校ぐらいあったのが、今では約1200校まで減ってしまいました。今は変化のスピードが早いのですが、そんな変化にも遅れを取らず、今まで通り多くの自動車学校の見本であり続けることですね。

これからの社会において、車自体が変化していくことは自動車学校を運営していくうえでは見逃せません。電気自動車や水素自動車、それに空飛ぶ車やAIを活用して全自動で動く車の登場など、どんな車が登場しても、道路交通法はそれに合わせて変化していきます。 そしてそれを教えるのは自動車学校の役目です。どのような車であっても、操作や法律をきちんと皆さんに伝えて、死亡事故ゼロになるような社会を目指して、自動車のメーカーとも協力しながら進めていきたいですね。

 

――ありがとうございました。最後に読者に向けて一言メッセージをお願いします。

私だけでなく職員たちも、自動車学校の見本になろうと日頃から安全運転の向上に向き合っています。たくさんの方が、安全なドライバー、安全なオペレーターを育てるような仕事に興味をもっていただければうれしいですね。

何より、人に何かを教える仕事は、始めると非常に楽しくなる仕事です。この業界であれば、自分が一生懸命向き合うことで安全運転につながり、社会にいい影響を与えていく。こうした結果が、目に見えるとうれしくなりますよ。

 

郡山自動車学校について

・ホームページ:http://www.koriyamazidoshagakko.co.jp/

 

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