鳥取から世界に挑む日本セラミック株式会社。超音波センサ開発の奥深さとは?

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written by ダシマス編集部

日本セラミック株式会社

自動車の安全運転支援や、街なかの照明制御など、暮らしの見えないところで働き続ける日本セラミック株式会社のセンサ技術。同社は鳥取県から世界へ向けて、超音波・赤外線などを用いた多彩なセンシング技術を発信し、安心・便利・省エネを支える製品を生み出してきました。

なかでも車載向け超音波センサは、ミリ単位の違いが性能に影響する繊細な領域。膨大な検証とデータ分析、構造の微調整を繰り返しながら、一つひとつの製品が形づくられていきます。

開発の最前線に立つのが、超音波センサ事業部で技術業務を担う田中 雅也(たなか まさや)さん。学生時代から手を動かすことが好きだった田中さんは、検証・分析・設計調整を担当し、世界市場で戦える品質の追求に向き合い続けています。

「日常にある“好き”が、気づけば今の仕事につながっていました」

そう語る田中さんに、開発の現場だからこそ感じる奥深さや、若手が集う職場の空気、そしてこれから描くキャリアの未来について伺いました。

係長補佐・超音波センサ事業部開発部 田中 雅也さん

係長補佐・超音波センサ事業部開発部 田中 雅也さん

入社5年目。鳥取県出身。学生時代から手を動かすことに興味があり、高等専門学校(以下、高専)へ進学後、日本セラミック株式会社に入社。現在は車載向け超音波センサ事業部で、障害物検知による自動車の駐車支援などに使われるセンサの性能チューニングに従事。要求仕様に合わせた構造調整、検証計画の立案、データ分析、改良までを一貫して担当し、繊細な特性を見極めながら製品化へとつなげている。

生活を支えるセンサを試行錯誤しながら形に

──日本セラミックとはどんな会社なのか、事業内容を教えてください。

一言で言うと、人や物の動きを感知するセンサを作っている会社です。

たとえば、車の自動駐車支援システムで障害物を検知する超音波センサ、セキュリティシステムの侵入者検知などに使用される赤外線センサ、環境対応車(HV、PHV、EV)に搭載されモーター制御やバッテリーマネジメントに使用される電流センサ。

照明やそのリモコンに搭載され人を検知して自動で照明を点灯させたり、Bluetooth技術によりリモコンで照明の明るさや色をコントロールしたりするモジュールセンサなど、生活のあらゆる場面で利用されている様々なセンサを作っている会社で、生活の安心・利便性・省エネなどに貢献する縁の下の力持ちのような存在です。

──身近なところで活かされているんですね。開発部では、どんな業務を担当されているのでしょうか?

主に、自動車メーカーさんからいただく要求仕様に合わせて、センサの性能を調整します。案件ごとに条件が変わるので、毎回オーダーメイドのように構造や特性をチューニングしていますね。

日々の仕事は「検証→データ分析→改良→再検証」のサイクルの繰り返しです。センサは多くの条件を網羅的に検証する必要があって、ひとつずつ丁寧に確認する作業が重要になります。

思った特性が出ないこともありますが、その度に原因を探って調整を重ね、仕様に合うまで仕上げていきます。

──なるほど。この仕事の面白さはどんなところにありますか?

求める性能を満たすまで、設計や検証、データ分析まで一貫して関われるところですね。どうすれば仕様を満たせるか?を自分で考えて構造を調整しながら試行錯誤するプロセス自体が、開発ならではの面白さだと思います。

検証を重ねると、少しずつ「特性の傾向」や「構造と結果のつながり」が見えてくるんですよ。“こう変えたらこうなる”という理解が深まると、次にも活かせるようになります。

思わぬ偶然の発見があるのも魅力です。過去のデータを見返してヒントが得られて、別の案件で試してみたら狙った特性が再現できた……なんて経験もありました。

超音波センサは繊細な製品で、わずかな構造の違いで特性が大きく変わります。だからこそ、ひとつの調整が性能を大きく左右する点に、難しさと面白さを感じます。

 

「技術職に就きたい」から始まった世界を相手にする仕事

──日本セラミックに入社を決めた理由も教えていただけますか?

地元でありながら大きな製造業で働ける点です。もともと就職活動では「手を動かす技術職に就きたい」という思いが強くありました。ちょうどコロナ禍で県外の企業説明会に足を運びづらかったこともあり、自然と地元企業にも目を向けるようになったんです。

その過程で日本セラミックを知り、鳥取県の中では規模が大きい製造業でありながら、事業をグローバルに展開している点に惹かれました。

──入社してみて、ギャップを感じた部分はありますか?

ひとつは、想像以上に地道な仕事だったことです。学生のころは「技術職=手を動かして作る仕事」というイメージが強かったのですが、実際は、検証計画を立てることが重要で。

膨大な試行・検証をコツコツ積み重ねる根気強さが必要で、「愚直に進めるしかない」と感じる場面が多く、技術者としての粘り強さが鍛えられました。

もうひとつは、世界規模の競争に立ち向かっていたことです。超音波センサは国内にも強い競合が多いですが、海外メーカーも参入していて、低価格を武器にした競争も激しい傾向です。

良いものでも高ければ売れません。品質とコストの両立をどう実現するか。そうした世界市場で戦う視点が求められる、といった発見もありました。

 

同じテンションで刺激を受けながら技術を磨けるチーム

──働いてみて、職場の雰囲気はどのように感じていますか?

開発部は全体的に明るくてコミュニケーションが取りやすい雰囲気だと思います。年代が近いメンバーが多いので、話しかけやすく、質問もしやすいですね。配属されて1年半ほどですが、しがらみもなくフラットに話せる人ばかりで働きやすいと感じています。

開発部は約10名で、その多くが20代後半〜30代前半の若手メンバーです。同期や1歳前後の年齢差の人が多いので、自然と距離感が近くなりました。

若手同士で声を掛け合いながら前向きに取り組める空気があり、同じテンションで頑張れるのは、この部署ならではだなと思います。

──年齢層が近いと距離感も縮まりやすいですよね。職場にはどんなタイプの技術者が多いですか?

技術オタクタイプのような個性豊かなメンバーが多いです。検証で行き詰まったときに驚くような独創的なアイデアを出してくる人や、家に専門機材を持っている人などがいます。そんなメンバーの話は聞いていて純粋に面白いですね。

私はそこまでの技術オタクではなくて、自己評価としてはライト寄りだと思っています(笑)。さまざまなタイプの技術者がいるからこそ、刺激が多い職場ですね。

 

日常に溶け込んでいることが仕事につながる

──今後の目標について、どのように考えていますか?

技術面でも経験面でもまだまだ未熟さを感じる場面が多く、開発技術をしっかり磨くことが最優先だと感じています。

それでも、学生のころから技術に興味があって高専に進んだので、その延長線上で「いつか自分が関わった製品が世の中で動く瞬間を見たい」という思いはずっとあります。

まずは開発部の一員として、製品に確実に貢献できるレベルに到達することが目標です。そのうえで、将来的には、自分の力でひとつの製品を作り上げられる技術者を目指したいと考えています。

──最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。

就職活動は「働くイメージが湧かない」「自分に合う仕事が分からない」と悩むことが多いですよね。私もまさにそうでした。

でも振り返ると、当時の自分には“小さなカテゴリーだけど好き”と思えるものがありました。私の場合は中学生のころから手を動かすことや技術の授業が好きで。その延長で高専に進み、今の進路につながりました。

日常に溶け込んでいる“好き”に目を向けてみると、自分の得意や興味の傾向が見えてきます。その積み重ねがいつか仕事としての軸につながることもあるので、自分の感覚を大切にしてほしいです。

 

(編集:成田愛恵・執筆:石田千尋

 

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