お客様との信頼が、自分の成長になる──株式会社たちばな 松本社長が語る、着物営業の醍醐味
written by ダシマス編集部

株式会社たちばな

1954年創業の株式会社たちばなは、長野県を拠点に呉服事業やフォトスタジオ事業を全国に展開しています。「地元に愛される呉服屋 日本一」など、5つの日本一をグループビジョンとして掲げ、着物文化を次世代へつなぐ事業を手掛ける同社。そんな職場で、営業職として働くことのやりがいとは何でしょうか。
今回お話を伺ったのは、同社の代表取締役社長である松本亮治(まつもと りょうじ)さん。1998年に営業職として入社し、新人賞を獲得。その後SC店舗の立ち上げや商品部を経て、2009年に代表取締役社長に就任されました。自身も営業の現場で苦労と成功を重ねてきた松本社長に、たちばなの営業職の魅力と、そこで得られる成長について語っていただきました。

代表取締役社長 松本亮治(まつもと りょうじ)さん
1998年、株式会社たちばな入社。営業職として新人賞を獲得後、SC店舗の立ち上げや商品部を経て、2009年に代表取締役社長に就任。社長就任後、「着物を楽しむ会」や「着物レンタル1万円」をスタートさせ、着物レンタル365を全国展開。コロナ禍を経て「豊かさ」という企業価値を再定義し、「日本文化」「家族」「地域」を3つの軸に事業を展開。「2038年働きがい日本一」を掲げ、インサイドアウト経営を推進している。SBCラジオのラジオパーソナリティーも務め、着物文化の発信にも尽力している。
お客様の“好き”が、自分の“好き”になる。たちばなの営業が体験する、特別な信頼関係
──たちばなでの「営業」とは、どのようなお仕事なのでしょうか。
営業として、お客様一人ひとりの人生に深く関わり、長い時間をかけて信頼関係を築いていきます。着物は高価な買い物ですから、ただ商品をお勧めするのではなく、お客様の好みはもちろん、ご予算のこと、時にはご家族のことまで親身になって考える。まさに人間力が試される仕事です。
そうした深いお付き合いの中で、「あなたがいるからお店に来たのよ」と嬉しい言葉をいただくのは、えも言われぬ喜びがあります。お客様から直接いただく「ありがとう」の言葉一つひとつが、この仕事の価値そのものだと感じています。
──お客様との信頼関係を築くために、最も大切にされていることは何ですか。
人への興味関心を持つことが全ての始まりです。お客様が身につけているものや話題にされることには必ず意味があります。そこにどれだけ気づき、興味を持てるかが大切なんです。
例えば猫が好きなお客様との会話を弾ませたくて、猫について調べているうちに、いつの間にか自分も猫好きになっていることがあります。最初は仕事のためだったはずが、気づけば自分も夢中になっている。お客様の「好き」を知ろうとする努力によって、自分の世界がどんどん広がっていくのも、この仕事の醍醐味だと思います。
──実際に、たちばなではどのような方が営業として活躍されているのでしょうか。
「営業」と聞くと話が上手い人を想像するかもしれませんが、決してそれだけではありません。
例えば、自分から積極的に話して新規のお客様から信頼を得るタイプもいれば、お客様の話をじっくり聞く「聞き上手」に徹することで、トップクラスの成績を収めている社員もいます。営業スタイルも本当に人それぞれで、日々、見ていて面白いですよ。
大切なのは、自分の強みを活かして誠実にお客様と向き合うこと。共通しているのは、誰もがお客様のことを真剣に考えている、という点だけかもしれないですね。
──営業というと個人プレーのイメージが強いのですが、たちばなの営業組織はどのような方針で動いているのでしょうか。
たちばなでは、チーム全体でお客様をおもてなしするという文化があります。個人のスキルだけに依存しないのが、たちばなの営業組織の強みです。お客様との信頼関係においては個々人の魅力や対応も大事な要素ですが、「たちばな」という店舗そのものに信頼を寄せていただけることが大切です。
一人の力では応えられないご要望も、チーム全体で知恵を出し合えば、より良い提案ができます。誰かが困っていれば自然と周りが助け、成功すれば全員で喜ぶ。厳しいけれど、決して一人にはしない。こうしたチームワークがあるからこそ、色んな個性を持つ社員一人ひとりが安心して挑戦し、活躍できるチャンスがあるのだと思っています。
「成功するまで続ければ失敗はない」──松本社長が歩んだ、営業から経営者への道
──松本社長ご自身も営業職からキャリアをスタートされたそうですね。
はい、入社1年目で新人賞をいただきました。でも正直に言うと、その時の私は「自分一人でも売上は作れる」と慢心していた部分があったんです。
転機となったのは、ショッピングセンター第1号店となる茅野店の初代店長を任された時でした。社内にノウハウもないゼロからの挑戦で、正直不安でいっぱいでした。そんな私に会長は「成功するまでやり続けたら失敗なんてない」と励ましてくれたうえで、「お前が好きなようにやれ」と全てを任せてくれたんです。
──実際に店長として、どのような経験をされたのでしょうか。
手痛い失敗を経験しました。「自分一人でも5000万円くらい売上を作れば利益は出る」という慢心から、一緒に働いてくれている人たちを大事にできていなかったんです。その結果、社員が次々と辞めていき、最終的に3人まで減ってしまいました。
そこで痛感したのが「店長なんて社員がいなかったらただの親父」だということです。
自分一人でできることなど、たかが知れている。社員みんながお客様を温かく迎え、それぞれが心を込めて接客し、その中で店長も一緒になってお客様と向き合う。そういうチーム全体での「おもてなし」があったからこそ、お客様に「この店に来てよかった」と思っていただけていたんです。
お店の魅力というのは誰か一人で作っているものではなくて、みんなで作っているものなんだと改めて気づかされました。
──その経験が今の経営にどう活きていますか。
あの時、全てを任せてもらったからこそ、私は「全ての原因は自分にある」と考えるようになりました。誰かのせいにするのではなく、自分で考え、行動し、結果を受け止める。この経験が、私を大きく成長させてくれたんです。
私が会長にしてもらったように、今度は私が社員たちに同じ経験を提供したい。
ですので、たちばなでは「お客様のことが一番わかっているのは店舗」という方針のもと、商品の仕入れから販促活動まで現場に大きな裁量を与えています。任せてもらったからこそ当事者意識が芽生え、視野が大きく広がる。こうした「信頼して任せる」という文化を大切にしています。
「人間力」という資格なき成長。営業経験によって磨かれる実力
──「信頼して任せる」という文化の中で、実際に社員の方々はどのように成長されていくのでしょうか。
面白いことに、新入社員は最初、自分が今まで接してきた世代のお客様からファンになっていただけることが多いんです。同世代とばかり付き合ってきた人は同世代から、おばあちゃん子で育った人はご年配の方から。まず自分の得意な層から営業がスタートするんです。
でも経験を重ねていくと、それまで苦手だった世代のお客様とも自然に話せるようになっています。世代が変わると価値観も考え方も全く違いますから、最初は戸惑うことも多い。でも毎日接客を繰り返すうちに相手の気持ちが分かるようになり、「あなたに着物の相談をしたい」と言ってもらえるようになるんです。
この仕事には特別な資格は必要ありません。でも、どれだけ多くの人から信頼され頼られる自分になれるか。そういう意味での「人間力」が確実に身についていくのを実感できると思います。
──ただ、そうした成長の過程は決して楽なものではないですよね。
そうですね。売れない時は本当にきついと思います。高価な商品を扱うだけに、売れない時は「自分に魅力がないからだ」と落ち込んでしまう。誰のせいでもなく、自分自身と向き合わなければならないから、逃げ場がないんです。
でも、だからこそ成長できると思います。
へこんでいても始まらないと腹をくくって、お客様と向き合い続けることで、少しずつ相手の気持ちが分かるようになってくる。この繰り返しが、確実にその人を強くしてくれます。
──社員の成長を支えるために、どのような考えで組織づくりをされているのでしょうか。
私たちは「2038年働きがい日本一」という目標を掲げています。
かつては「お客様の満足が社員の幸せに繋がる」と考えていましたが、今は違います。まず「社員の働きがい」があり、その充実感がお客様へのより良いサービスとなって波及していく。この「インサイドアウト」の考え方こそが、企業の持続的な成長の鍵だと考えています。
具体的な取り組みの一つが、決して一人で悩ませない環境づくりです。例えば入社後の10日間から2週間の宿泊合宿研修では、同期と寝食を共にしながら本音で語り合える関係を作ります。社内の先輩が講師となって会社の価値観だけでなく、仕事の悩みや喜びも共有する。この期間が、その後の強固な人間関係の礎となると考えています。
また、現場に出てからも、年齢の近い先輩がマンツーマンで支える「ブラザー・シスター制度」があり、月に一度は同期が集まって悩みを共有できる機会もあります。
実は退職者アンケートで「人間関係が嫌で辞めた」という人がほとんどいないのですが、その理由は、こうした支え合う文化が根付いている証だと思っています。厳しいからこそ、みんなで支え合って成長していく。それが私たちの目指す「働きがい」の形ですね。
「誠実さ」と「営業への情熱」を持つ仲間と共に──松本社長が描く、たちばなの未来
──たちばなの今後の展望について教えてください。
着物文化を次世代へ確実に継承しながら、全国のお客様に「豊かさ」を届けていきたいと考えています。呉服事業を軸にフォトスタジオや福祉事業なども展開していますが、どの事業も根底にあるのは「人と人との深い繋がり」です。
この先も、お客様の人生の大切な瞬間に寄り添える存在でありたい。そのためには、やはり現場で活躍する社員一人ひとりの力が何より大切だと考えています。
──その未来を一緒に創っていく仲間に、どんなことを期待されますか。
何よりもまず「誠実さ」を持っている方と一緒に働きたいですね。真心があり、嘘をつかず、モラルを守る。人として信頼されることが全てのベースになります。そのうえで、自分自身を大切にし肯定できている人は自然と周りを惹きつけます。
そして何より、人と接することが好きで、お客様との会話を楽しめる方。特に営業という仕事の面白さは、やはり人との出会いにあります。着物の知識は入社してから身につければいい。でも、お客様に興味を持ち、一緒に喜びを分かち合いたいという気持ちは、最初から持っていてほしいと思っています。
──最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
私が魅力を感じるのは、場の空気を明るくできるような、エネルギーに満ちた人です。新しいことにワクワクできる好奇心旺盛な人。
着物の営業は、決して簡単な仕事ではないかもしれません。ですが、お客様の人生の大切な瞬間に深く関わることができる、本当にやりがいのある仕事です。厳しいけれど人間的に大きく成長できるこの環境で、一緒にたちばなグループの未来を創っていきたいと思っています。
──ところで、松本社長は毎日着物を着ていらっしゃいますよね。なぜそこまで着物にこだわるのですか。
一番は、やはり着物が好きだからです。でも10年以上着続ける中で、着物がもたらす良い影響を実感する場面は多くありました。
例えば、着物を着ていると自然と立ち居振る舞いが丁寧になりますし、相手に与える印象も変わります。不思議なもので、こちらが着ているだけで場の空気が和らいだり、初対面の方との会話のきっかけになったりする。着物は単なる衣服ではなく、自分の生き方や人との関係性にも良い影響を与えてくれる、特別な力を持っていると感じています。
だからこそ、この素晴らしい文化を次の世代に伝えていきたい。そんな想いを共有できる仲間と出会えることを、心から楽しみにしています。
株式会社たちばなの詳細・採用情報はこちらから
◆HP:https://www.tachibana-group.co.jp/
◆求人情報:https://recruit.jobcan.jp/tachibana