加工とECで地元の畜産農家をPR!新潟の飲食店・朔のナレッジ

レッド

written by 一緒俐(いおり)


「な、なんだ?!この旨さは…!!ビールと黒毛牛の肉のハーモニーがたまらん!!」

食べたら一生、忘れられない…ここでしか食べられない絶品料理だ!と牛肉料理で評判になっている飲食店が新潟県にあります。地元で生産された黒毛牛の美味しさを最大限に引き出して提供しているのは長岡市にある飲食店、和ダイニング朔、エスタゴストーザです。

今回その飲食店を経営している(株)朔の代表取締役社長、山崎さんに取材いたしました。なんと、飲食店だけでなく加工工場やECサイトでの販売も実施しているオーナーさんで「もっともっと地元産業の良さ、強みを活かしたコラボレーション事業を展開したい」という熱い想いも伺えました!

本記事は前編として「畜産農家との共同事業を通じて、朔はどのように畜産農家の課題や悩みを解決できたのか」、その成功事例と今後の展望について、ご紹介します。ぜひ(株)朔の地方創生プロジェクトにかけた想いをご覧ください!

山崎 武雄さん(代表取締役社長)

山崎 武雄さん(代表取締役社長)

平成22年3月、30歳で(株)朔を設立。新潟県長岡市で飲食店5店舗を経営している。 noteでは『飲食店利益構造改革』で店舗運営や働き方についての記事を配信中。 ちなみに2児の父親で、子どもたちと一緒に遊ぶのが楽しい!と語る。 趣味は青春時代に打ち込んだ野球で、現在も強豪チームに憧れと尊敬の気持ちを抱いている。 また仕事の合間にビジネス系のYouTubeチャンネルを聴くなど、日々の勉強を怠らない。 好きな言葉は「仕事の報酬は仕事。良い仕事は次の仕事を生む。」

畜産農家たちの尽きない悩みを一網打尽にする

―――まず(株)朔の事業内容を教えてください。

情報、人、もの、カネ、時間の経営5要素を最大限使い、5店舗の飲食店(和ダイニング朔(別館もあり)、エスタゴストーザ、迎賓會館 紡希)と加工場を経営しております。またECサイト「熟成工房 朔」も運営しています。従業員数はアルバイトも含めて45人、総勢60名ほど在籍しています。

 

―――長岡にお住まいの方はきっとよくご存知でしょうね!口コミ評価も高評価がついていますし、お客様がたくさんいらっしゃるのではないかと存じますが、新型コロナウイルスの影響はありましたか。

コロナ禍に入った後は宴会が激減しましたね。

一番の基盤の店舗だとコロナ前、年間1500件程度の宴会実績があり、地域のさまざまな懇親会がある際は当店を選んでいただいてました。が、「都会がくしゃみをすると田舎が風邪をひく」ともいう言葉がある通り、感染者が長岡市内で出なかったとしても数名出たとしても外出自粛ムードが非常に高まっているので、客数も売上も下がりました。

もっと言うと新潟県では緊急事態宣言が出ていないので休業要請は出ませんでしたが、経営上、頼りたくなる各種支援金は出ませんでした。

 

―――宴会が激減した中で支援金も補助金も無いとなると過酷そうですが、朔さんはとても活気があるようですね。一体なにがあったのでしょうか。

数年前から地元の畜産農家と共に未来志向で進めていたプロジェクトの一環として、食肉の通信販売をしていましたので、巣籠もり需要に応えるECサイトが売上の大きな柱になっているんです。特におすすめが地元の畜産農家のサーロインステーキです!

引用:熟成工房 朔 https://store.shopping.yahoo.co.jp/saku2/wakearijukuseisteak1pound.html#

 

―――献立を今すぐステーキに変更して食べたくなるくらい美味しそうですね!このようにECサイトにて中島牧場で生産された美味しいお肉を販売しようと思ったきっかけは何でしたか。

 

「朔で培ったノウハウを活かせば、畜産農家の課題や悩みを解決できそう」と思ったからです。

中島牧場との共同事業の話を例に挙げると…僕らと共同事業を始める前、中島牧場の一番のお得意様はスーパーでした。スーパーもたくさんの方がお買い物に来るとはいえ、とても愛情込めて作り上げた一級品の肉なのにスーパーでは『新潟県産 越乃黒毛牛』というありきたりな商品名で販売されていきます。

「このお肉はどの牧場で、どれほどの歳月と想いを込めて生産されたのか?」

現在はトレーサビリティ(製品や商品がいつ、どこで、誰に作られたのかの表記)がありますが、生産者や生産地について検索したりしようとはせず「スーパーで買った、とても良い牛肉」くらいにしか思わないでしょう。

中島牧場は450頭~500頭以上もの牛を育てている県内屈指の大牧場なのに…県の品評会で最優秀賞を取るほど、血統やえさ、飼育方法にこだわりがあるのに…販売の仕方ひとつで地元の人にもその凄さや想いがあまり伝わらないのがもったいないと感じました。

 

――確かに…畜産農家の方もそれはやるせない…。

畜産農家の課題や悩みはそれだけではないんですよ。スーパー以外の販路を作れない(生産する日々の中で作る暇がない、売り方を知らない)、消費者の声が生産者に届かない、A3ランクの赤身肉がトレンドになってきた中、A5ランクの霜降り肉でないと高く売れない…。

「これが続けば、畜産農家は仕事に誇りや自信を持てなくなっていってしまう。それなら僕らが畜産農家さん自身が既に持っている魅力や強みをたくさんの人に知ってもらえる機会を作って、彼らを主人公にしたい!」と考え、共同事業を企画しました。

 

共同事業で取り戻した誇り「畜産を継いで良かった」

 

―――そういったご経緯があって共同事業を始められたのですね。これまで畜産農家の手を取り合い、畜産農家の未来とその商品を消費者に一番近い距離で提供できる企業として、さまざまな取り組みをされてこられたと思います。そのプロジェクトについて具体的に教えてください。

では、実際に行った施策を3つご紹介します。

 

1つ目は『1tプロジェクト(2020年5月)』です。

新型コロナウイルスの影響で今まで牛肉を供給できていたところに供給できなくなった(在庫過多になってしまい行き場がなくなってしまった)牛肉をFacebookを中心に販売しました。

「コロナ禍でのフードロスを削減したり、畜産農家や漁師たち生産者の支援がしたい」という温かい想いが100回以上のシェアにつながり、売上は700万円を達成しました。

予想をはるかに上回る反響で僕らも驚いたんですが「誰かのために役立つお金の使い方をしたい」というニーズに気づけた取り組みでした。

 

2つ目は『産直サイトに加盟(2020年6月)』したことです。

中島牧場とライセンス契約を結び、産直サイトに加盟しました。現在、食べチョク、ポケマルにて掲載されています。

引用:有限会社 中島牧場の通販 | 中島興一郎さん - ポケットマルシェ

https://poke-m.com/producers/246732

引用:中島牧場の紹介:新潟県|食べチョク

https://www.tabechoku.com/producers/21503

 

ポケマルでは「みんなの投稿」の欄から消費者の口コミが届きます。食べチョクでは、消費者から「作ったよ&届いたよ」の欄にて美味しかった!などのコメントが届きますし、「Q&A」では消費者からの疑問に生産者が直接答えてくれるシステムもあります。

消費者との距離が近くなるからこそ、生産者はとても励みになりますよね。

実績も好調で、特に2021年3月に2週間ほど農林水産省が実施した送料無料商品対象になると、わずか1日半で1300件販売できました。

 

3つ目は『お通し100円セール(2021年4月)』を実施したことです。

2020年の年末からの3回目の緊急事態宣言で長引き、飲食店舗は1日の売上が0円の日も相次いでいました。とはいえ牛肉も在庫過多になってきたため、早く消費しなくてはなりません。なので、生産者応援企画としてお通し100円セールを継続しています。「100円で気軽に黒毛牛が食べられる!」とこちらも大好評ですよ。

 

―――SNSやネットでの販路拡大と、飲食店でできることで畜産農家の方の課題やお悩みを、朔の事業で培ったノウハウを駆使して美味しく解決していったわけですね!「自分の人生の主役は自分だけ!だからこそ、自身が主人公になれるきっかけを作って困っている人を助けたい!」という山崎さんの原動力が垣間見れるなぁと感じます。

ありがとうございます。中島さんは、この共同事業を通じて本当に変わりましたよ。「今までは実家が畜産をやっていたから継ぐという後ろ向き寄りな選択をしてたけど、今は実家を継いで良かったと感じるようになった。もっとウチのお肉を食べてもらいたい!と思えるようになった」と話してくれました。僕もそう言ってもらえて嬉しかったです!

▲写真:中島牧場の中島さんと黒毛牛たち

 

飲食店は畜産農家や漁師がいないと食材が手に入りませんし、飲食店があって消費者に食を提供できるので「持ちつ持たれつ」を大切にしています。

近年では第六次産業化が主流になろうとしていますが、第一次産業に日々専念している人が急にそれらに対応するのは難しいかと。飲食店もECサイトも食品加工もやっている朔なら、生産者の想いを全国どこでも消費者に提供できるので、僕は皆さんのアクセントになる事業を続けて、手助けできれば幸いです。

 

生産者の想いも伝えて「食」をもっと楽しくしたい!

―――これからも生産者との共同事業を続けられると存じますが、これから山崎さんが叶えたいこと、挑戦したいことについて教えてください。

現代の日本は飽食の時代。栄養素が全て入ったカプセルご飯で食事が完結する未来が来るかもしれないとも言われています。

それでも…やはり温かいご飯が食べたいですよね!心の豊かさにもつながる、生きるために必要な「食」をもっと楽しくして、皆様の幸福度を高めていきたいですね!まだまだ外出自粛やマスク生活が続いて先が見えないコロナ禍だからこそ、食べることを一番、身近な娯楽だとみなさんに感じていただけるようにしていきたいです。

 

「コロナ禍で困っている生産者を少しでも助けられるなら、フードロスに貢献できるなら、このサイトで生産者を支援する買い物をしよう」といったお買い物がコロナによって増えたのを体感したわけですが、ただのモノ消費からコト消費、イミ消費に変化したんだと感じました。ここでしか手に入らないモノを、どういったシーンで、どのように食べると更に美味しく、楽しく感じられるか、心も満たされるのか…それをもっと気軽に実現していける機会を作りたいです。

 

―――美味しい!にもっと付加価値をつけていきたいとお考えなのですね。

はい。なので僕らは飲食店、食品加工、ECサイト運営を通じて地元の牧場や漁師さんのストーリーも伝えるプロデュースを続けたいです。その過程で中島さんのように、畜産業に対して誇りや自信を持てるようになったり、第一次産業に憧れて後継者候補として田舎に戻ってくる、田舎で就職する若者が増えたりしてくれたら…僕らも仕事を通じて社会貢献もできたと、幸せな気持ちになります。

 

中島牧場のように、新たなスタートを切ろうしている畜産農家さん、漁師さん、若者たちが新潟にはたくさんいます!「ここから始めよう!」その初心を忘れず、スタッフやお客様、地元の生産者とみんなで輪になって一緒にお店や事業を始める…皆様にとって大きな出発点であり続けたい『朔』だからこその仕事、事業を続けます。

 

=あとがき=

飲食店の経営だけでなく、食品加工技術やECサイト運営の実績やご経験を活かして地元の畜産農家の課題を解決し、第一次産業の支援や地方創生にも貢献できている(株)朔さんのナレッジ紹介はいかがでしたか。飲食店は畜産農家や漁師がいなければ成り立たない中で、お互い感謝しながら事業を運営されている姿勢に胸を打たれる方も多いのではないでしょうか。

コロナ禍でもネット販売などの工夫を凝らして新事業を始めたりと、まだまだできることがあると勇気づけられるお話もありましたね。生産者の方が日々の仕事のかけがえのなさを実感できた共同事業のエピソードに、取材した私たちもじ~んと来ました!

 

生産者の想いも、生産物の美味しさも消費者に伝えられる販路拡大、消費者との距離が近くなる販促、より美味しさを追求できる熟成加工技術、ECサイト上での訴求ノウハウを持っている(株)朔さんとコラボしたいと思った方は、ぜひ山崎さんにお話しください!

また、飲食店を経営するだけじゃない、地元を活性化させるための策を常に考え続ける朔では新しい仲間も募集しています!山崎さんたちと一緒に働きたい方はぜひ求人もご覧ください。

=(株)朔の会社概要=

・公式ホームページ:http://saku-nagaoka.com/company/

・和ダイニング朔のFacebook:https://www.facebook.com/saku220222/

★後編はこちら:https://www.dashimasu.com/posts/detail/saku-nagaoka2

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