職人から現場の指揮官へ。ベテランが語る、別荘建築という仕事の厳しさと面白さ。

シルバー

written by 五十嵐清美

株式会社新建築

建設業界一筋、30年以上のキャリアを誇るベテラン現場監督、三井さん。彼の歩みは、19歳の大工見習いから始まった。その手で木材を意のままに操る職人から、数千万円のプロジェクト全体を指揮し、人、図面、そして無形のプレッシャーと向き合う監督へ。挑戦を続ける彼の言葉から見えてくるのは、仕事に対する揺るぎない哲学と、共に働く仲間や顧客との深い繋がり。三井さんから見る建築という仕事の厳しさと、その先にある確かなやりがいをお伺いしました。

三井 勇人さん

株式会社新建築 18年目 現場監督 大工職人として建設業界での経験を積み、30歳で株式会社新建築へ転職。現在は、現場監督としてキャリアを積み上げている。1級建築施工管理技士の資格取得に向けて奮闘中。

家族を守るため、大工から現場監督の道へ。

ーーー三井さんのご経歴を教えてください。

地元の高校を卒業後、大工の道を志し長野の職業訓練校へ入学しました。そこで基礎を学んだ後、地元の工務店に就職。社員4〜5人でやっていた会社で19歳から11年間、大工見習いとしてひたすらに腕を磨く日々が続きました。しかし、30歳を目前にした頃、勤めていた工務店の経営が厳しくなりました。当時私は小さい子供がおり、住宅ローンも抱えていたため、悩みに悩んだ末、転職を決意しました。

新建築に入社後、12〜13年は大工として働いた後、現場監督になって現在6年目になります。一般建築と異なり、僕たちは60〜70坪の1棟を1年かけて仕上げていくスタイルで数千万円、時には億を超えるプロジェクトの責任は非常に大きいので、基本的に案件の掛け持ちはなく、集中して建物に向き合える環境で日々仕事をしています。
新建築は、会社や施工上のルールを守った上であれば、個人の考えや思いを尊重して色々とチャレンジさせてくれる会社。社長はそういう各々の姿勢を応援してくれて、時には助言して助けてくれたりもします。
建築業界は自分のやった成果が残る世界なので、厳しい部分もありますが楽しみながらやっています。駆け出しの頃は、チャレンジすることも多くありましたが、辛いなと思っても、将来の自分を思い描きながら耐え忍んできました。そうすると、大変だと思ってたことが気が付けば大変じゃなくなる時がやってくる。そうしてキャリアを築いてきました。
専門知識や専門用語だけでなく、現場の雰囲気などに慣れて、自分の居場所を見つけられると楽しくなっていきます。
そこに慣れるまではひたすら、耐えることが大切ですね。

 

 

現場を知っているからこそ、”納まり”がわかる。

ーーー現場監督にとって、職人経験は大きな強みになりそうですね。

確かに、職人経験が今すごく役に立っているんです。木造建築が多いのですが、自分の頭の中で納まりをイメージして図面に起こせるのは過去の経験のおかげですね。知っているからこそ職人さんや設計士さんと対等に話せるという点でもやってきてよかったと思っています。

例えば、こだわりのある別荘だからこそ、全室クロスでの仕上げではなく、1部屋ごとにタイルや塗装など仕様が異なります。部材がどう組み合わさったら、空間がどう構成されるかという”納まり”が、身体に染みついています。
また、タイルの壁と塗装の壁が接する”取り合い”をどう美しく仕上げるか、あるいは複雑な木造の架構をどの順番で組むべきか、など工程がスムーズに進むよう設計する必要があります。CADを使いながら平面で組み立てた後、職人の方々へ現場で納まりまでを説明する時も職人をやっていたからこそわかる勘所のようなものがありますね。

一方で、大工時代には関わらなかった基礎工事や電気設備など、学ぶべき領域は多岐にわたっていて、まさに多能工と言われるほどの知識量には日々奮闘中です。また、別荘ならではの難しさとして特筆すべきは、現場で図面が変わることです。一般住宅とは異なり、建てながら仕様が変更する事も珍しくありません。

 

 

別荘建築だからこそ味わえる、難しさと感動。

ーーー仕様の変化ですか。別荘建築ならではの難しさと面白さがありそうですね。

はい、別荘建築では設計士さんと常に打ち合わせをしながら進めていきます。一般的なハウスメーカーさんであれば、プランや仕様が決まった状態で進行しますが、別荘建築では施主からの要望や、設計とより良い建物にするための検討により、納まりや仕上げ材が変わる事があります。仕上げ材によって下地も変わってきますので、常に最新の情報を共有しながら、細心の注意を払って進める必要があります。特に、別荘は空間を広く取る建物が多いんですが、木造と鉄筋を組み合わせた仕様は大工時代には経験したことがなく、その出来上がっていく姿に息を呑むこともしばしば。建物を覆っていた足場が外され、全貌が明らかになる瞬間はいつも感動しますね。設計の素晴らしさを思い知らされます。図面上の二次元の線が、数ヶ月にわたる喧騒と労苦を経て、美しい一つの立体として立ち現れる、あの達成感があるからこそ、また作りたいと思えます。

そのためにも、チームで働く上で最も大切にしているのがコミュニケーションです。会話ができないと職人さんに心を開いてもらえないんですよね。笑
僕も職人上がりで人と話すことが得意な方ではないのですが、やっぱり会話や挨拶が大事だと思っていて。コミュニケーションをとって、職人やお客様、社内の仲間との日々の対話をするよう心がけています。お客様からのご質問には誠実にお答えしています。そうして、信頼関係を築き、職人・工務店・自社の三方良しの関係性で長くやっていきたいですね。年々材料費や人件費の高騰や職人不足も気になるところなので、自分たちの会社の利益だけを考えるようなやり方ではうまくいかない。お互い譲り合って、折り合いをつけながら良い物件を建てていきたいと思っています。

 

 

電球交換1つに根付く、先代から学んだ哲学。

ーーー三井さんが新建築で働く中で大切にしていることは何でしょうか?

建てた後でも、「電球1つ交換してくれって言われたら、駆けつけられる会社を作っていきたい」という言葉は、先代の時代から心に刻まれています。これは単なるアフターサービスの話ではありません。家が完成した後も、顧客の人生に永く寄り添い、どんな些細な困りごとにも駆けつける。その姿勢こそが、会社の核となる価値観です。この哲学は現社長にも深く受け継がれていて、現社長自身が率先して実践してくれています。僕たち社員は社長のそういう背中を見て、その姿勢に共感し、自らの行動に反映させています。言葉ではなく行動で示すリーダーシップが、会社全体の文化を形作っています。

僕にとって、会社の仲間や仕事を表す言葉は、絆です。
建築という仕事は、一人では決して成し遂げられない。設計者、監督、多種多様な職人、そしてお客様。それぞれの専門性と想いが一つの目標に向かって結集することで、初めて建物は完成します。1つのものを全員で作り上げていくには、縦・横の繋がり、全てが繋がっていないとやっぱりいいものってできないと思うんです。

 

 

ベテラン48歳、まだまだ成長中。

ーーー最後に、三井さんのモチベーションの源泉を教えてください。

家族ですね。仕事に没頭できているのは家族のおかげ。家族に支えてもらって仕事ができていると思っているからこそ、頑張れますね。実は今、1級建築施工管理技士という国家資格の取得に挑戦しています。自分のスキルアップもありますが、この年になっても頑張ってる親の背中を見せたい。言葉よりも行動で伝えたいなと日々思っているところです。
資格がステータスになる業界でもあるので、僕もこの業界に身をおいて、どうせやってるんなら挑戦してみたいなとも思っています。ちなみに、会社から資格取得のプレッシャーは一切なくて、周りでも自主的に学んでいる人が多いです。専門知識に長けた同僚たちがいる環境なので、周りに置いてかれないためでもあります。その環境に感化されて、自分もステップアップしなきゃなって。

別荘という誰かにとって特別な建物の建設に携わってみたいと、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。軽井沢にて、皆さんのご応募をお待ちしております!

 

取材後記

「絆」という言葉に込められたのは、単なるチームワークではない。互いの仕事を尊重し、信頼し合うことで生まれる強固な繋がりだ。三井氏のキャリアは、技術を磨き、知識を深めることの重要性はもちろん、それ以上に、人と人との「絆」を紡ぎ、守り、育んでいくことこそが、未来を築く上で最も大切なのだと、静かに、しかし力強く私たちに教えてくれる。彼の物語は、木材やコンクリートでできた世界において、最も強固な構造物は、人と人との繋がりによって築かれるという真理を証明している。

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